彼女達のカメラを売り込む≪九月十日≫ -爾-街に戻ると雑貨屋に入り、絵葉書10枚(10Rp≒220円)と洗濯に使うチューブ入りの洗剤(18Rs≒400円)を購入。 店の中にある品物は、ほとんどがインド製。 洗剤には、”Made in India”と書かれ、”Super-X Multipurpose Liquid Cleaner”とも書いてある。 果たして俺の英語が確実に通じて、売ってくれた物かどうか、分らないが信用するしかない。 その足で、岩本昌子君がいるかどうかと、”Express House”に顔を出すが、女性の連れと街に繰り出しているのか留守だった。 そのままU-ターンして、広場近くの”マンドリン”と言う名のレストランに入る。 店に顔を出すと、昌子と連れの女性がいた。 俺 「やあ!」 昌子「あらっ!」 俺 「横へ座っても良いですか?」 昌子「どうぞ!」 俺 「東川言います。よろしく。」 連れに挨拶をする。 連れ「ええ、聞いてますわ。私、井下明子言います、よろしくね。」 俺 「食事は済みましたか?」 明子「ええ!今終った所なんです。それで私達今、これからどうしようか話してた所なんです。」 俺 「何を出す?」 明子「もう二、三日で日本に帰るものですから、このカメラと電卓をこの国で処分できないものかって・・・・・、このカメラも電卓もこの旅行のために、無くしても良いように安く買ったものなんです。それでいくらかでも処分できれば、いろいろ買いたいものもまだあるし・・・・って、それなら東川さんに頼んでみたらって今話していた所だったんですよ。」 俺 「そうですね。日本の製品は評判が良いですから、売れるかも知れませんね。ちょっと、言ってみましょうか!カメラ貸して貰って良いですか?」 明子「どうぞ!」 明子の持っていた、ハーフ用の小さなカメラを手にすると、レストランの経営者の所へ持って行き、カメラを売り込んでみた。 俺 「マスター!日本のカメラだけど、買う気ない?」 マスターは、大げさに両手を広げて、カメラを貸してみろと言って、俺の手のひらにあったカメラを取り上げた。 マスター「なるほど、見本のカメラ良いカメラね。」 俺 「小さくて、性能も良いし、抜群だと思うよ。これは彼女達のものだけど、もう日本に帰るから記念にこの国に置いて帰ろうって言っている所なんだ。それでマスターにどうかと思ってね。」 マスター「っで、いくらだね?」 俺 「そうね、US$200(6万円)でどうだね?」 マスター「US$200、それはちょっとね。ルピーでどうかね。2500Rs(55000円)払っても良いけどね。」 俺 「ルピーね。ルピーじゃ・・・ちょっと渡せないね!」 マスターは、何とかルピーで手に入れようとしてくるが、すぐに売ることなく餌をばら撒いた所で、ちょっと様子を見ることにした。 交渉を打ち切って、二人のいるテーブルへ戻る。 明子「ネー!どうだった?」 俺 「ルピーなら、買うとさ。」 明子「いくら?」 俺 「2500Rsだ。」 明子「ルピーでも良いじゃないの、ねー、昌子!」 昌子は小さくうなずいた。 俺 「でもねー!US$で売って、闇屋と交換すればもっと高く売れるからね。」 そんな話をしながら食事を済ませて、近くにあるカメラ店とか、土産物屋に顔を出してみる。 特に土産物屋のご主人は、かなり色気を見せたが売らずに店を出た。 俺 「ねー!カメラちょっとの間貸してみてよ。明日、もう少し売り歩いてみるから・・・なかなか面白いしさ。」 明子「ええ良いわ!そんなに高く売らなくて良いんだからね。」 俺 「ああ!わかった。」 彼女達と別れて、部屋に戻り、”洗濯をしなくちゃ・・・・。”と、思いながら身体が動かず、ベッドに身体を横たえるともう、起き上がることは出来なかった。 ”今日は、ちょっと動き回りすぎたかなー!ちょっと疲れたみたいだ。” 思い腰をあげ、友達三人と田舎に手紙を認める事にした。 もう外は暗い。 あんなすごいスコールも、10㌔くらい離れた所では降らなかったとか。 実に愉快な雨だ。 一緒に雨宿りをした少年は? ボロ家から顔を覗かせた美女は? 今頃、家族たちとどんな話をしていることやら。 静かな夜を迎えている。 |